2017年頃からテレビでの露出が多くなり、知名度も爆上がりした[Alexandros]。今でこそ、若者たちにストレートに伝わる聞きやすい日本語での曲がぐっと多くなりましたが、デビュー当初は英語詞での尖った曲も多く、数々の名曲が世間一般にはあまり知られていない印象をファンとしては持つところです。
ということで、今回は[Alexandros](当時はChampagne)の初期のアルバム『I wanna go to Hawaii』から『Underconstraction』をピックアップして歌詞の和訳と解説を綴ってみました。
歌詞と和訳全文はこちら
『Underconstraction』
Produced by Yohei Kawakami
Hello
Am I still standing still?
Along friends that I don’t know
Bored by days of boiling eggs
But I guess I belong in hereハロー
今もじっと立っているのかな?
自分でもよく知らない友達と一緒に
あいつらのふりをする日々には飽き飽きしているけど
でも確かにここに自分はいるんだろうな
「他人と関わり続けることがある種必然である人生の中で自分のアイデンティティはどうありたいか?」
若者の多くが抱えるであろう問いであり苦悩をテーマに見事に歌い上げている1曲ですね。一貫して「僕」による語り口調で歌詞の世界観が構成されているところが、Oasisの『Wonderwall』を彷彿とさせます。
それでは、歌詞のハイライトを一緒に見ていきましょうか。
序盤:生きる意味について頭を巡らす主人公
Hello
Am I still standing still?
Along friends that I don’t know
Bored by days of boiling eggs
But I guess I belong in hereハロー
今もじっと立っているのかな?
自分でもよく知らない友達と一緒に
あいつらのふりをする日々には飽き飽きしているけど
でも確かにここに自分はいるんだろうな
歌詞の主人公が「友達」の集まりの中にいる情景から曲はスタートします。「friends」というワードを使ってはいますが、普段僕らが思い浮かべる「友達」とは何やら事情が違うようです。それにしてもこの「boiling eggs」って何でしょう。
これは僕自身も初めて知って驚いたのですが、「boiling eggs」というフレーズは「外面が白人で中身がアジア人」ってことを揶揄するスラングらしいんですね。(外側の白身が白人、中身が黄色い肌=アジア人といったニュアンスでしょう)
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ボーカルの川上洋平さんといえば、9歳~14歳の期間に家族とシリアに住んでいたエピソードが有名です。自身のルーツと全く異なる環境とそんな環境の中で確かに感じれる自分という存在。少年時代を過ごす中で覚えた様々な感情がこのパラグラフに暗示的に詰め込まれていることが読み取れます。
中盤:視点が未来へと移っていく
Once somebody asked me “Can I commit a suicide?”
Well go on If you think you’re right昔、誰かが僕に尋ねてきたんだ
「自殺してしまってもいいのかな」って
まあ、好きにすればいいよ
自分が正しいと思えるならね
次に情景はふと誰かが自殺について投げかけるシーンへ。このSomebodyが誰かについては、単なる顔見知りとか色々な見方ができると思いますが、おそらく「僕」自身ではないでしょうか。
自分のアイデンティティをまだまだ見定められない少年(少女)期、理由もなくふと生きている必要性について自問自答してしまう時って誰もが経験すると思います。
Before it’s too late I’d like you to state
This life existed
The man was fighting against the worldただ、手遅れになる前に言葉に残しておきたいのさ
こんな人生があったって
そいつはずっと世界と戦い続けていたってことを
ただ、あるべき自分のアイデンティティがどうであれ、その答えを模索しながらもがいたという事実、その時に抱いた感情というものは確かに残っています。
生きていようがいまいが、それまで自分が関わってきた人達にそういったは何かしらの形で届くものです。
だったら、人生が終わるべくして終わる時まで自分というものに誇りを持って日々を過ごそう、主人公の心情のベクトルが段々と過去から未来へ向いていきます。
Why don’t you take one book from the shelf?
And you’re gonna find one question they ask
“What is this [Music] to you?”その本棚から本を一冊手に取ってみたらいい
一つの問いに出会うだろうから
「君にとって音楽とはなんだ?」I try to be cool and seek for the smart one
I always come back to the same conclusion
I don’t have a clue but that’s why it’s so funよくクールにふるまって、スマートな自分を探し求めている
そういう時はいつも同じ結論にたどり着くのさ
根拠はないけど、だからこそ心が躍るんだ
曲の終盤で、突然ある一つの問いが投げかけられます。「君にとって音楽とはなんだ?」と。
理想の自分でいられるもの、心が躍るもの、主人公にとってそれが「音楽」であったことがこの場面で分かります。
曲の始まりの情景では曖昧模糊だった感情が、最終的には周りが何を言おうが後悔のないように自分のやりたいことを死ぬまでやり尽くすんだ、という強い意志に変わっていきます。
Come laugh at me now
Antagonize me now
I receive it, accept it, digest in my headさあ僕を笑えよ
敵に仕立てあげろよ
受け止め、受け入れ、頭で噛みしめてやるからBut my fire never fades
Until the day I become
What I had designed to beそれでも自分の中の火が消えることはない
僕がずっと望んでいたものになる日が来るまではね
終盤:もう問いは必要ない
Hello
Am I still standing tall?
You know I don’t need to answer thatハロー
今も僕はしっかり立てているのかな?
もう自分でわかってるんだろ
そんなこともう答えなくてもいいのさ
どこからかまた「Hello」の声が聞こえました。曲の出だしと同じフレーズ構成で自身の存在についての問いが投げかけられますが、主人公は最後に自分なりの答えを見つけたような結びで締めくくられます。
この曲の出だしと結びで「Hello」と呼びかけるのは、生きる意義を探して路頭に迷っていた自分自身(=曲中の「Somebody」)だったのかもしれないですね。
最後までお読み頂きありがとうございました!